
肺炎
■高齢者での特殊事情
高度高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗菌薬の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者肺炎のほとんどは、誤嚥(ごえん)による肺炎であり、よく繰り返すことから、単に肺炎を治療するだけではなく、予防することが重要になります。
肺炎による死亡は60代では10万例あたり5人程度ですが、80代では、10万例あたり約70~160人で10倍以上になります。85歳以上では、10万人あたり年間2000人以上が肺炎で死亡し、毎日200人以上が肺炎で治療されていると推定されます。
誤嚥性肺炎は、嚥下(えんげ)機能障害のために、咽頭(いんとう)、副鼻腔(ふくびくう)、歯周、口腔に常在する病原体が、唾液などの分泌物とともに気道に入り込み、肺炎を発症したものです。この場合は 食事の誤嚥ではなく、夜間寝ている間に知らず知らずのうちに飲み込まれる不顕性(ふけんせい)誤嚥が原因になることが多いようです。
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。とくに、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすいものです。加齢とともに、のどぼとけの位置は下がり、嚥下の時にのどをふさぐのに時間がかかるようになるからです。
しかし、不顕性誤嚥のすべてが肺炎を発症するわけではなく、軽度の炎症であれば、そのまま治癒します。むせているからといってすぐに絶食にして予防する必要はありません。しかし、体位変換ができない場合や重症肺気腫(はいきしゅ)などでは、容易に気道閉塞が生じて肺炎発症を助長します。つまり、不顕性誤嚥が肺炎に結びつくのは、宿主の免疫能や肺機能の低下、体位変換能力の低下などが背景としてあり、深く関わっているといえます。
2014/10/1 掲載
・最新の記事に戻る
![]()
これまでの掲載分
![]()
・低血圧とは
![]()
・睡眠障害
![]()
・自家感作性皮膚炎
![]()
・気管支喘息
![]()
・閉塞性動脈硬化症
![]()
・虫 刺 症
![]()
・咽頭結膜熱(プール熱)
![]()
・突発性難聴
![]()
・口腔ケア
![]()
・花粉症
![]()
・呼吸不全
![]()
・貧血
![]()
・膀胱炎
![]()
・蜂窩織炎
![]()
・骨粗しょう症
![]()
・前立腺がん、肥大症
![]()
・高尿酸血症と痛風
![]()
・口腔ケア
![]()
・脂質異常症
![]()
・狭心症
![]()
・嚥下障害とは
![]()
・止血と創処置の原則
![]()
・一過性脳虚血発作
![]()
・胃・十二指腸潰瘍
![]()
・栄養失調(るいそう)
![]()
・めまい
![]()
・高血圧
![]()
・うつ病
![]()
・花粉症
・アレルギー性鼻炎
![]()
・急性腎盂腎炎
![]()
・マイコプラズマ肺炎
![]()
・インフルエンザ
![]()
・ノロウイルス感染症
![]()
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
![]()
・肺炎
![]()
・変形性関節症
![]()
・脱水症
![]()
・熱中症
![]()
・心筋梗塞
![]()
・脳卒中(脳血管障害)
![]()
