知らないと怖い疾患
元気の素
健康な身体を蝕むさまざまな疾患の初期症状や原因、対処などを知ることで、手後れのリスクを減らしましょう。

うつ病

■うつ病とは?

私たちは、生活のなかのさまざまな出来事が原因で気持ちが落ち込んだり、憂うつな気分になったりすることがあります。しかし、数日もすると落ち込みや憂うつな気分から回復して、また元気にがんばろうと思える力をもっています。
ところが時に、原因が解決しても1日中気持ちが落ち込んだままで、いつまでたっても気分が回復せず、強い憂うつ感が長く続く場合があります。このため、普段どおりの生活を送るのが難しくなったり、思い当たる原因がないのにそのような状態になったりするのが、うつ病です。

■原因は何か

うつ病は、まだわからないことが多い病気です。脳の神経の情報を伝達する物質の量が減るなど脳の機能に異常が生じていると同時に、その人がもともともっているうつ病になりやすい性質と、ストレスや体の病気、環境の変化など、生活の中のさまざまな要因が重なって発病すると考えられています。


うつ病が起こりやすい性格

・生真面目

・几帳面

・仕事熱心

・責任感が強い

・気が弱い

・人情深く、いつも他人に気を配る

・相手の気持ちに敏感


誘因となるストレス

うつ病は、何らかの過度なストレスが引き金になると考えられています。さまざまなストレスのうちでとくに多いのは、人間関係の変化と環境の変化です。たとえば身近な人の死や、リストラなどの悲しい出来事だけではなく、昇進や結婚、出産といった嬉しい出来事がきっかけでうつ病になることもあります。

体の病気や薬が原因となることもある

慢性の病気の場合はとくに、体の不調や痛み、社会生活の変化、経済的な負担などがストレスとなり、抑うつ症状がみられることがあります。また、薬のなかには副作用として抑うつ症状が現れるものがあります。ウイルス性肝炎の治療に使われるインターフェロン、抗がん薬、ステロイド、抗潰瘍薬などが、うつ病を引き起こすことがあります。

体の中の変化

人間の脳の中には、神経伝達物質と呼ばれる物質があり、無数の神経細胞に情報を伝達するはたらきをしています。うつ病の時は、神経伝達物質のうちの、気分や思考、意欲などを担当するセロトニン、ノルアドレナリンの量が減っていることがわかっています。また、言語、運動、精神活動を担っている脳の前頭葉を中心に、脳の血流や代謝が低下していることもわかってきています。

 

症状の現れ方

うつ病の症状には精神症状と身体症状があります。また、これらの症状が、1日のなかで時間とともに変化するのも、うつ病の特徴です。多くの場合は、朝が最も悪く、夕方にかけて回復していきます。


精神症状

・抑うつ気分

気分が落ち込む、憂うつ、理由もなく悲しい気持ちになる、何の希望もない。

・興味や喜びの喪失

今まで好きだったことや趣味をやる気になれない、テレビや新聞を見てもおもしろくない、性的な関心や欲求も低下する。

・精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止)

体の動きが遅くなる、口数が少なくなる、声が小さくなる。また、逆に、じっと座っていられない、イライラして足踏みをする、落ち着きなく体を動かす。

・思考力や集中力の低下

頭がさえない、考えがまとまらない、決断力や判断力が低下する、反応が遅くなる、仕事の能率が落ちる、注意力が散漫になって、人のいうことがすぐに理解できない。

・意欲の低下

人と会ったり話したりするのが面倒になる、何をするのも億劫。

・自責感

何でも悪いほうに考える、必要以上に自分を責める、まわりの人に申し訳ないと思う。

・希死念慮(きしねんりょ)
生きていくのがつらい、死んだほうがましだ。

・精神病症状

自分が重大な罪を犯したと思い込む罪業妄想、貧乏になったと確信する貧困妄想、がんなどの重い病気になったと信じ、検査結果で心配ないと話しても訂正できない心気妄想などがみられることがある。


身体症状

・睡眠の異常(不眠または睡眠過多)

・食欲の低下または増加

・疲労、倦怠感

・ホルモン系の異常…月経の不順、性欲の低下、勃起の障害

・ その他の症状…頭痛(すっきりしない鈍い痛み)、頭重。肩、腰、背中などの痛み

・ 病気に気づいたらどうする

大切なことは、「最近おかしいな」と思ったら、早めに医師に相談することです。うつ病は、きちんと医師の診察を受け適切な治療を受ければ、治すことが可能な病気です。