慢性閉塞性肺疾患(COPD)
(まんせい へいそくせい はいしっかん)
■どんな病気か
慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと略)は、たばこ煙を主とする有毒物質を長期間吸入することによって生じる肺の炎症による病気です。主に肺胞系の破壊が進行して気腫(きしゅ)型(肺気腫(はいきしゅ)病変優位型)になるものと、主に気道病変が進行して非気腫型(気道病変優位型)になるものがあります
COPDは、肺胞(はいほう)‐末梢気道‐中枢気道に及ぶすべての病変を包括するものですが、以前は、肺気腫と慢性気管支炎に分けて呼ばれていました。
COPDの患者数は全世界的に増加しており、2020年までに全世界の死亡原因の第3位になると推測されています。
COPDの原因の約90%は喫煙です。主な症状は慢性の咳(せき)、痰と労作性(ろうさせい)の息切れ(体を動かした時に出現する息切れ)ですが、ゆっくりと進行し、典型的な身体所見も重症になって初めて現れることが多いため、早期に気づきにくいことが特徴です。
重症になると呼吸不全に至り、息苦しさのために日常生活ができなくなったり、かぜなどをきっかけに急に症状が悪化すること(増悪(ぞうあく)または急性増悪)を繰り返すことになります。
早期の診断には肺機能検査が不可欠です。禁煙によるリスクの回避と適切な病気の管理により、有効な予防と治療が可能な病気です。
■原因は何か
COPDの危険因子は、外因性危険因子と患者さん側の内因性危険因子に分けられます。外因性危険因子には、喫煙、大気汚染、職業上で吸入する粉塵(ふんじん)、化学物質(蒸気、刺激性物質、煙)、受動喫煙などがあります。
喫煙はCOPDの最大の外因性危険因子であり、COPDの発症に関与することが立証されています。
日本では1960年以降の経済成長に伴い、たばこ販売量や消費量が増加し、これに20年遅れてCOPD(慢性気管支炎および肺気腫)が増加しています(図29)。1985年以降は、とくに男性において顕著です。
一方、喫煙者すべてがCOPDを発症するわけではなく、一般的に喫煙者の20~30%に発症します。患者さん側の内因性危険因子として、COPD発症に関係するさまざまな候補遺伝子が報告されつつありますが、α1‐アンチトリプシンの欠損を除いては、COPDの発症にどの程度関係しているのかは明らかになっていません。
■症状の現れ方
COPDの症状は慢性の咳(せき)、痰と労作性の息切れです。COPDはゆっくりと進行し、前述のように典型的な身体所見も重症になって初めて現れることが多いため、早期に気づきにくいことが大きな問題です。
階段や坂道での息切れにはじまり、重症になると歯みがきや着衣の動作でも強い息切れが現れます。一方、喘息(ぜんそく)と異なり、通常は安静にしている時には息切れがないのが特徴です。
喀痰(かくたん)は通常は粘液性ですが、気道感染が合併すると量が増え、膿性になります。肺機能の悪化が進むと、高二酸化炭素血症を伴い、朝方の頭痛などが現れます。
COPDは肺の病気のみにとどまらず、全身に症状が現れます。進行すると体重減少や食欲不振も起こり、体重と生命予後との関連も明らかにされています。
体や手足の筋力、筋肉量も減ってしまいます。また、右心不全(うしんふぜん)が出現すると呼吸困難がさらに悪化したり、全身のむくみや夜間の頻尿(ひんにょう)などが現れます。息切れなどによる抑うつ状態や不安などの精神的な症状も多くみられます。
肺が過度に膨脹(ぼうちょう)するため、ビア樽(だる)状の胸郭(きょうかく)といわれる胸郭前後径の増大が認められます。空気を肺から能率よく吐き出すために口すぼめ呼吸をするようになります。呼吸補助筋の使用が増え、とくに胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとっきん)が肥大します。ただし、これらの典型的な身体所見は、重症になるまで現れません。
安定期のCOPD患者が気道感染や大気汚染をきっかけに急に肺機能が悪化し、呼吸困難が増悪することがあります。呼吸数や脈拍数が増え、痰の量や膿性痰が増加し、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼーする呼吸音)などが出現します。増悪がみられると入院の回数も増え、死亡率が高まり生命予後を悪化させます。
■病気に気づいたらどうする
過去に肺機能検査を受けたことのある人は少ないと思います。健康診断でも心電図検査は必ず含まれていますが、肺機能検査はあまり含まれていません。
40歳以上で喫煙歴があり、咳、痰が長く続く場合や階段や坂道での息切れに気づいたら、医療機関を受診して、肺機能検査を受けることをすすめます。
2014/11/1 掲載
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