低血圧とは
血圧が低いことだけでは低血圧症とは呼ばず、立ちくらみ、めまい、全身倦怠感、疲れやすい、頭痛、耳鳴り、動悸、むかつき、食欲不振、起床困難などの不愉快な症状がある時に、低血圧症として治療の対象になります。低血圧であっても症状がなく、臓器循環障害もなく、病的な意義の少ない時は体質性低血圧と呼んで区別します。
《起立性低血圧》
立ち上がった時に、立ちくらみ、めまい、時には気を失うなどを含む重い症状を現すことがあります。通常、立ち上がる時には下肢の静脈系に血液がたまり、心拍出量が減少して血圧が低下しますが、いろいろな代償機転がはたらき、心臓が送り出す血液の量が瞬時に増し、さらに血管が収縮して血圧が維持されます。この代償機転がうまくはたらかない時に、起立性低血圧を起こします。この時、脳に行く血液が一時的に減少することにより、さまざまな症状が現れます。本態性(ほんたいせい)高血圧の場合にも、普段の血圧は高いのに、起立性低血圧が起こることがあります。
この原因としては、とくに高血圧のお年寄りでは、自律神経のはたらきが鈍って立ち上がった時の血圧調節がうまくいかないことがあげられます。
低血圧の治療の目的は単に血圧を上げるのではなく、症状を改善して生活の質(QOL)を向上することにあります。たとえば運動療法(軽い運動、理学療法)、食事療法(塩分を多めに摂取する、高蛋白食など)や、乾布摩擦などを行います。起立性低血圧は、寝ている状態から立つ際に動作をゆっくり、あるいはいったん座位をとることである程度予防できます。症状が強くてQOLの低下がみられる時には薬物治療を行います。お年寄りでは、白衣高血圧(はくいこうけつあつ)といって医師が血圧を測る時だけ高値を示すことも多いので、家庭で血圧を測定することが、降圧薬の量を決める時に参考になり急な降圧を避けることが大切です。降圧薬は少量から始めて徐々に増量することが必要なので、そのためにはかかりつけ医に日常の様子や家庭での血圧を知らせることが重要です。
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